彼女は予想の斜め上を行く
「だけど……」

「だけど?」

「諦められなかった」

傷付けられても…。内角抉られても…。

斜め上を常にいく。強気で自由奔放で。実はさりげない気遣いが出来て。ほんの少し不器用な君のことが。

「葵のことが、やっぱり好きだから」

「長野君……」

「大好きなんだ」

俺の背中に未だ微かに震える手を回し、しがみつくように抱き着く。

そんな葵が可愛すぎて。理性を少し…いや、かなり揺さ振られる。

極め付けに―――。

「あたしも好き。大好き…」

潤んだ瞳と上目遣い。透き通る声で紡ぐ言葉。

「それ反則……」

思わず小さな呟きを漏らす。

「長野君?」

不思議そうに小首を傾げ、恐らく少々顔の赤い俺を見詰める彼女を目の前に。

葵が可愛すぎるのが悪い…。

これから自らが起こすアクションに対して、心中で言い訳をした。
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