彼女は予想の斜め上を行く
「あいてる?」

ドアのことだと理解するのに、少し時間が掛かる。

この後の予定が《空いているか?》とか……都合のいい言葉に脳内変換したがる俺。

「今、開けます」

そんな自分を振り切り、鍵を開ける。



車の中では、たわいもない会話。

金本葵は、思いの外よく喋る。

基本的に、喋るのは大好きらしい。

「彼氏っすか?」

「え?」

「いや…携帯。たまに見てるんで……」

俺と喋りつつ、時々携帯をじっと見つめることがある。

「違うよ?野球だから」

「野球?」

「うん。あたし、プロ野球好きなの。オヤジみたいでしょ?」

笑いながら話す金本さん。

そっか。彼氏じゃないんだ。と、安堵する。

そして彼女の好きな物を知れて、また少し接近した気になり嬉しくなった。
< 28 / 251 >

この作品をシェア

pagetop