彼女は予想の斜め上を行く
長野勇人23歳。
大卒二年目。
県内に数店舗洋菓子店を構える会社に勤務。
一年目は、営業課に。
そして、二年目はここ開発課に異動となった。
実は幼い頃は、パティシエになることが夢だった。だから、開発課への移動は素直に嬉しい。
そんな軽く憧れの課への移動初日の挨拶は、やや不発気味に終わった。
そして只今、挨拶不発の原因になった人へ改めて挨拶中。
先程の髪の薄い中年上司、改め開発課の新田課長によりその人のもとへ連れてこられた。
「金本さん。改めて紹介するよ。」
金本さん…って、いうんだ。
「営業課から移動になった……
「ちょうの…はやとさん…?」
課長の声に被せるように、その人は俺の名前を読み上げた。
でも違うんだ。
何が違うって……。
「あっ、ながのです!
ながの はやとです!」