彼女は予想の斜め上を行く
もともとはっきり言う性格だとは、職場の人の話で知っていた。

だが、彼女は予想の斜め上を行く。

女どころか男でも、躊躇するような言葉も彼女は平気で言う。



「よく言う……。こんな強引なことするくせに」

恨めしそうな視線は、彼女の手を未だ掴んだままの俺の手へ。

「あっ…。すいません!」

慌てて手をパッと離す。

彼女の手首は、俺のせいで少し赤くなっていた。

「痛いっすか?」

恐る恐る聞く。

強引にいったことを後悔しているわけではないが、少し痛々しい彼女の手首を見て申し訳なくなった。

「別に?じゃっ、今日は一応ありがとう。お疲れ」

《一応》のあたりが嫌味っぽく聞こえたのは、俺の気のせいではないはず。



バタンッ

彼女はドアを閉め、アパートに小走りで帰っていった。

前言撤回。

強引に行ったこと、少し後悔中……。
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