彼女は予想の斜め上を行く
「勇人は、金本葵が好き?」

相変わらず座った切れ長の目の中に鋭い光を宿して、俺をじっと見ながら言った。

思わず逸らしたくなってしまうその強い視線を見つめ返して言う。

逸らしたら、負けな気がしたから。

「好きです。俺、金本さんのこと欲しいです」

「……彼氏、いるのに?」

「はい」

「彼氏。すげぇイイ男かもよ?」

「それでもです」


先輩はしばらく考え込むように、天井へと上っていく煙草の煙を見つめていた。

かと思うと、煙草の火を消しスクッと立ち上がった。


「勇人。二軒目行くぞ?呑み直す」

「はぁっ!?今からっすか?」

時刻は、まもなく十一時。

明日も仕事だし、週始め。

普段の完璧な男なら、ここで切り上げるはず。

「いいから。今度は俺に付き合え」

そう言って、さっさと自分一人で会計を済ませる。
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