彼女は予想の斜め上を行く
勇人と葵の異変に気付いたのは、昼休憩の時だった。

「あっ、金本さん」

これから昼休憩の俺達と入れ替わりに葵とその同僚が食堂から出てきた。

「休憩終わりっすか?」

「うん。もうそろそろね」


ん?

この二人、今までこんな風に話していたか?

疑問に思ったが、昼飯を早く終わらせたい俺は勇人に声を掛け一人で先に席に着いた。


勇人が葵を意識しているのは、わかってた。

何かと葵のことを聞き出そうとするし、移動初日に見とれていた件もあったから。

葵のことを知りたがる勇人は、なかなかしつこい。

根負けして、当たり障りないことだけは答えていた。

勇人の存在が、全く気にならないと言ったら嘘になる。

だが、葵と勇人にはほとんど接点がなかった。

なによりも俺には、切り札がある。



< 45 / 251 >

この作品をシェア

pagetop