彼女は予想の斜め上を行く
気付いた時にはそれなりに楽しんでいる自分がいて、期待出来ないはずのキャバ嬢の耳元で囁くナンパ男になっていた。

俺はキャバ嬢の好みだったようで、連絡先をゲット。

葵一筋の俺は絶対にしないのに、「絶対、連絡する♪」と調子のいいことを耳元で囁く。

後に葵の手により廃棄される名刺を胸ポケットに突っ込んだ。

「先輩!いい加減、帰りましょう!」

それを見て、タイミングを測っていたかのように勇人が声を掛けてきた。



勇人の肩を貸りてタクシーに乗る途中、冷たい夜風が頬にあたる。

せっかく押し込めた葵への気持ちを思い起こさせるような風。

酒の力と女の力も葵への想いの前では、無力と化すようだ。

「ここにお願いします」

気付けば、運転手に葵のアパートの住所を告げていた。

「あれ?先輩って、実家住まいっすよね?」

ヤバい…。

勇人の存在、一瞬忘れてた。

葵の家知ってるよな…。

俺と葵のこと、バレるかな…。

俺はいいけど、葵は職場の人間に二人の関係がバレるのを嫌がる。
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