彼女は予想の斜め上を行く
「あっ、それから金本のことだけど」

俺達付き合ってるから…とか。

俺の女に手出すな…とか。

ストレートな言い方も出来たと思う。

でも、敢えてオブラートに言う。

混乱している勇人には、その方が有効な気がした。

遠回しに言った方が、色々考え込むと思った。

最高にイライラする夜を与えてくれたお礼だ。

「あいつは、やめとけ」

後にも先にもあんな意地悪な顔して言葉を発したのは、この時だけだったと思う。

俺、葵のことになるとキャラどころか性格まで崩壊するらしい。

「金本は、勇人の手にはおえないよ」

正直、勇人がどんな反応をするか未知数だった。

「じゃあ……、先輩だったら……手におえるんですか?」

……へぇ。

少し驚いた。

勇人って、こんな挑戦的な眼をして挑戦的なこと言うんだ。

負けじと、俺も挑戦的に言う。

「どうかな?葵は、予想の斜め上をいくからなぁ」
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