彼女は予想の斜め上を行く

口喧嘩の産物①

学生時代から信頼し、彼のようにイイ男になりたいと憧れた男。中島裕行26歳。

移動初日、その容姿に惚れ更にはつい最近少し知った内面にも惚れた女。金本葵同じく26歳。

そんな二人の関係を知ってしまい気分は最悪。とことん人並みな俺。長野勇人23歳。



衝撃的な夜から、一夜明けた朝。

「気まずい……」

目の前にある会社を眺めながら、低い声で呟く。

『どうかな?葵は、予想の斜め上をいくからなぁ』

《金本》ではなく、《葵》と呼んでいた。

それがすべての事実を語っているようで、かなり堪えた。

そして、自分の鈍さとバカさ加減にうんざりした。

気づくべきだった。

先輩の不機嫌の理由。

居酒屋での会話。

あれは、《嫉妬》と《牽制》だったんだ。



いつまでも玄関前に突っ立ているわけにもいかないので、渋々社内に足を踏み入れた。
< 58 / 251 >

この作品をシェア

pagetop