彼女は予想の斜め上を行く

コックコートと合わせて履いている少し細身の黒いパンツが、彼女の細長い脚をより強調している。

ただ、すこしケバい。アイメイクなんて特にバッチリだ。



開発課のあるこの建物には、販売店と彼女の働く製造課も入っている。

焼き菓子やスポンジなどは、工場で作っている。

デコレーションなどの繊細な作業は、金本さんを筆頭にした何人かのプロのパティシエが店舗に隣接した工房で行っている。

接客をする店員が足りなくなった場合は、工房からも手伝いを出すらしい。



ある程度の主要人物達に個人的な挨拶を課長と共に済ませた俺は、自分のデスクへ。

新しい職場。新しいデスク。

頑張れ!俺!!

なぁ~んて気合いを入れる。

そんな俺にかかる聞き覚えのある声。



「久しぶり。勇人」

「久しぶりっす!中島先輩」

大学の三学年上の先輩。中島 裕行〈ナカジマ ヒロユキ〉。

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