彼女は予想の斜め上を行く


「じゃっ、あたし寝るから。着いたら、起こして?」

座席をリクライニングさせ、アイマスクをつける。

よろしく~と言って、手を挙げた。

しばらくすると、規則正しい静かな寝息が聞こえてきた。

「寝るの、はやっ……」

ほんの2、3分で夢の中に旅立った金本葵を見つめながら呆気にとられて呟いた。



5月最後の土曜日。

本日諦めかけていたデート。

新幹線の自由席。

二人掛けの窓側に座るのは、欲するのを諦めかけていた金本葵。

その隣の席に座り、未だにこの状況を信じきれず間抜けっ面な俺。

この状況への経緯を説明するのは、少し複雑だ。
まぁ……そうだな。

一言で言えば……。

《口喧嘩の産物》……って、やつだと思う。



< 62 / 251 >

この作品をシェア

pagetop