彼女は予想の斜め上を行く

「金本が、この部屋に入って行くの見えたからな。金本、美人だから目立つよな～」

そう言って金本さんのことを狙っている一人だという噂の三輪主任は、金本さんの肩を抱き寄せた。

「あはは……。主任、誉めてもなにも出ませんよ？」

金本さんはひきつり笑いを浮かべながら、主任の手を振り払おうとする。

しかし中島先輩を合コンに誘った時と同様、持ち前のしつこさを最大限に発揮して決して手をどかさない。

「主任。お連れの方が、待ってるんじゃ？」

中島先輩はさりげなく二人を引き離す。

やはりここでも、あの《牽制》の視線を披露。

視線の意味まではわからずとも、さすがのしつこい男も威圧感を感じたらしく狼狽えている。

「つっ、連れはこの部屋に来るから大丈夫。みんなで飲もうって、言ってある。あっ、来た！まどかちゃん！こっち！」

主任は開けっ放しにした襖から廊下へ体を乗り出し、無駄に大きくブンブンと手を振った。

廊下を歩く店員や他のお客は、そんな彼に冷たい視線を送っていた。