彼女は予想の斜め上を行く
「そっ、そう…」

シュンとするゴリラ主任。

「じゃあ、さようなら。おやすみなさい」

最後まで威圧感な笑顔で、金本さんは襖を静かに閉じた。

招かれざる客二名が退室した後、金本さんには塩原夫妻から賛辞の言葉が贈られた。

二人とも何とかしたいのは山々だったが、俺と先輩の直属の上司に当たる三輪主任に遠慮していたらしい。

賛辞の言葉も一通り落ち着いた時だ。

初めに仕掛けたのは、金本さんからだった。



「中島君。ごめんね?あの子、帰しちゃって」

まただ。

またあの威圧感な笑顔を今度は、中島先輩に振り撒く。

「……別に」

金本さんが賛辞の言葉を受けている間、ひたすら沈黙を守っていた先輩がやっと口を開いた。

「随分楽しそうにしてたもんね?やっぱ若くて可愛い子は、いいよね~」

おぉ…金本さん厳しい~。なかなか言うなぁ……。

俺がある意味感心していると、普段温厚な中島先輩もムッとしたらしく言い返した。
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