彼女は予想の斜め上を行く


東京駅には、小一時間で到着。

たったそれだけの時間の為にアイマスクまで用意していた女は、意外にも到着する少し前に自分で起きた。

改札口へ向かいながら、尋ねる。

「目的地は?」

「……手、離して」

再び、指を絡めた手にジトーッとした視線が送られた。

「無理っすね。俺、繋いでたいし。それに俺が離したところで、どうせ金本さんから掴むと思いますよ?」

「そんなこと……」

途中まで言って、ほんの少し考え込む。

「……あるかも」

手を掴むのは、やはり急いでいる時の癖のようだ。

「じゃあ、このままで」

俺のペースで、事は進んでいる。

金本さんは「あ゛~。調子狂う…」と不満そうな顔をしていた。




< 84 / 251 >

この作品をシェア

pagetop