彼女は予想の斜め上を行く
東京駅には、小一時間で到着。
たったそれだけの時間の為にアイマスクまで用意していた女は、意外にも到着する少し前に自分で起きた。
改札口へ向かいながら、尋ねる。
「目的地は?」
「……手、離して」
再び、指を絡めた手にジトーッとした視線が送られた。
「無理っすね。俺、繋いでたいし。それに俺が離したところで、どうせ金本さんから掴むと思いますよ?」
「そんなこと……」
途中まで言って、ほんの少し考え込む。
「……あるかも」
手を掴むのは、やはり急いでいる時の癖のようだ。
「じゃあ、このままで」
俺のペースで、事は進んでいる。
金本さんは「あ゛~。調子狂う…」と不満そうな顔をしていた。