彼女は予想の斜め上を行く
聞こえないと思ったのか。

聞こえても構わないと思ったのか。

どっちにしろ自由奔放女のその言葉はなかなか無神経で。

朝のチャラ男なんて比にならないくらいに、俺を苛つかせた。

「普通に怒ってると思いますよ?」

嫉妬というやつに突き動かされ、少しツンケンした言い方になる。

「なんで…長野君にわかるわけ?」

ムッとしながら、聞き返してきた。

「だって金本さん、相当ひどいこと言ってましたよ?」

もちろん昨夜の中島先輩との口喧嘩のことだ。

まぁひどいというのは、相当オブラートに包んだ言い方なわけで。

あれは、もはや暴言だな。

「………………」

さすがの斜め上向き女もその通りだと思ったのか黙り込んだ。

「……やけに突っかかってくるじゃん」

しかし、黙ったのも束の間だった。

「そりゃ突っかかりたくもなりますよ。惚れた女が、他の男のことばかり考えてたら」
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