槇名さんの真実
20XX.4
「佳奈未~はよっ!」
もう少しで、下駄箱に到着、というところで後ろにバコッと衝撃が走った。
振り返る前に、私の顔を斜め下から覗き込んだ八重歯の光る笑顔の持ち主――・・
「ちょっと、イオ。力入れ過ぎ」
諦め半分、毎度のことながら注意すると、本人はさも悪びれもせず、ごっめーん!などと笑いながら両手を合わせる。
まぁなんだかんだ言って、もう慣れた。和田伊織こと「イオ」高校からの・・・一応、親友である。(友達といえば親友だ!と彼女に訂正されるがゆえ)
「なんか佳奈未の後ろ姿見てるとついねっ!やっちゃうんだよねぇ~」
なにが、つい、だ。と思っても言わないのが懐の深い私の人間性だと思ってもらえれば幸いである。
「てか、今日の数Ⅱの課題んとこ見せて」
そうなのだ、まだ新しいクラスになってから日も浅いが、授業はどんどん進んでく。進学校と地元では言われるためか、教師のスピードも容赦ない。
そもそも、現代文と古典以外全く他の科目に興味がない私にとって、あのすさまじい授業進度は酷過ぎる。
と、いうわけでイオのサポートが不可欠となるのだ。
「えぇ~またあそれ?ま、いいけどね!佳奈未ちゃんのためだもの~ノート貸してあげる!」
念のために言っておこう。イオはこんな感じて若干ウザいが頭は半端なくいい。学年3位以内の常連だ。
しかも勉強に関しては一切の自慢をしたことがない。まぁそれもこれも、そのぐらいの成績を取っておかないとダメらしい。
というのも、彼女の実家は開業医、尚且つ上の兄二人ともストレートで医学部に入ったスーパー家族の中で育ったため、のようだ。(これはあくまで周りの見解)
そんなわけで、勉強に関しては常に伊織の世話になっている。
基本的に私は、週末課題以外は面倒だからやらない主義だ。