槇名さんの真実
え、人に頼るな?ダメ人間?
別にそう言ってくれても構わない。確かに私はダメ人間だ。
しかしながら、イオの普段の世話をしているのは私だ。勉強以外では。そこを見落としてもらっては、なんだか腑に落ちない。
「そーいえばー、昨日さぁ橋本と帰ったんだけどー・・・」
イオと教室に向かいながら彼女の話に耳を傾ける。そうだ、昨日は珍しく他の約束を断ってイオはさっさと帰った。
橋本っていえば、確か一年のとき同じクラスだった男子の一人。
「けど、どーだったわけ?」
問いかけると、さっきまでのいつもの笑顔は消えていて、なんだか浮かない顔をした伊織がいた。
「――うん、なんかビミョーだった」
ビミョー...その言葉がすべてを物語っている。イオは嘘が吐けない人間だ。
二人だけで帰る、ということはそれなりに何かを見極めたくて選択したんだと思う。なぜなら、橋本は一年の頃からイオのことが好きだったからだ。誰がどう見てもバレバレ、という程に。。
対して、伊織は当時付き合っている彼氏が他に居たし、橋本のことはただの友達としか見ていなかった。
それでも橋本は諦めることなく、イオにアタックし続けて、ようやく昨日のチャンスまでこぎつけたのだ。
そう、伊織が他校のイケメン彼氏とちょうど別れて一カ月経ったこの日に。