槇名さんの真実
人の恋愛観なんて、そう易々と分かるわけないって思ってきたけど、今日確信した。
分かるわけないのだ、当事者じゃない限り。
どうも綾野と堤先生の話題には、堤先生が綾野をたぶらかした、だとか、綾野が金目当てで近づいた、だとか、挙句の果てには、できちゃった結婚で仕方なく...だとか
言い出したらキリがないくらいホントかどうかわからない噂で持ち切りだった。
そんな空間に嫌気がさして、ちょっとトイレに言ってくると皆の輪から抜け出した。
別に綾野なんて、どーでもいい。堤先生が何て言われようが私には関係ない。
ただ、周りに真実とは違うことばかり流されるとしたら
それは少し、いや、とても...
残念なことだと思う。
まして、あの真面目そうな堤先生は結構いい人だ。
専門は生物だけど、化学も担当していたから一年の時はスイヘイリーベイ・・・でお世話になった。
一度、授業中に気分が悪くなったことがある。基本あまりそういうことを人に気付かれない私は大人しく休憩時間になるのを待っていた。
そのとき...
「藤井さん、顔色良くないけど大丈夫?」
気分悪かったら保健室へ行きなさい。と彼女は言ってくれた。
担任ですら、私の表情から読み取るものは少ないというのに...
この人は、ちゃんと生徒を見てくれてるんだって思ったのを覚えている。