社長と秘密の生活
11.赤いドレスの女
要の仕事が忙しくなって、2週間が経った。
毎日のように帰りは深夜。
時には帰って来ない日もある。
会社の社長となれば休む暇がない事くらい理解は出来る。
だけど、クタクタで帰宅する要を見たら
そのうち身体を壊すんじゃないかと心配になる。
私に出来ることは、
栄養があり美味しいご飯を作って要の帰りを待つ事くらい。
本当は夕食や夜食を作って差し入れしたい。
だって、すぐ下の階にいるんだもん。
だけど、私がここにいることは秘密だし。
誰かにバレたらそれこそ要に迷惑掛けちゃう。
会いたいなぁ……。
だけど、今は……我慢よ……杏花。
私は自分に言い聞かせて、せめて『笑顔』だけでもと、
必死に笑顔を作る練習を。