社長と秘密の生活
「杏花。あれは工藤物産の創立記念パーティーの時ので、別に千鶴がどうのっていうんじゃない」
俺は言い訳染みた言葉を並べた。
「じゃあ、なんで大事に取っといてあるの?」
杏花は疑いの眼差しを向けて来る。
相当信じて貰えてねぇんだな。
「あのアルバムに、財界の有名な人達が結構載ってるんだよ。だから仕事部屋に置いてあるんだ」
「……ホント?」
杏花は大きな瞳を潤ませて……
「あぁ。杏花は俺と千鶴の関係を気にしてるみたいだけど、何とも思ってねぇよ」
「元カノじゃないの?」
「元カノじゃない」
「ホント?」
「あぁ」
杏花は涙目で布団をギュッと握りしめ執拗に訊いてくる。
そんな行動1つ1つが堪らない。
杏花が俺の事を想って妬いてくれた事が嬉しくて。
フフッ……。
思わず自然と顔がニヤける。
ヤキモチ妬いて貰えるなら幾らだって答えてやる。