社長と秘密の生活
「そういえば…“一条”ってよくある名前?」
「そうだなぁ…そう多くは無いが一族は結構いるから、会っても不思議じゃないかもな?」
「じゃあ、あの人も要の親戚だったのかなぁ?」
昼間、スパイス店であった彼の事を思い出していると、
「おいっ、どこで誰と会った!?」
急に要が大声を出した。
かなり怒っている感じ…。
眉間にしわを寄せて、驚愕の様子。
「えーっと、スパイス専門店で」
「名前を聞いたのか?」
「私が訊いたんじゃなくて、彼から名乗って来た」
「……で、名前は?」
要の表情がますます酷くなる。
「確か…“一条シュウヤ”って言ってたよ?」
―――――ガタッ。
要が急に立ち上がり、椅子が倒れた。
シーンと静まり返る部屋に、
時計の秒針の音だけがやけに響いて。