社長と秘密の生活
「あら、新しい方かしら?」
突然、背後から女性の声が…。
振り返ると、白髪の女性が立っていた。
「えっと……あの……」
緊張のあまり、上手く言葉が出て来ない。
「料理教室へ?」
「あっ、はいっ!!」
「私はサヨ。小さい夜と書いて小夜。ワケあって、苗字は明かせないの。ごめんなさいね」
彼女はサラリと自己紹介をした。
苗字は明かせない?
あっ!!……そうだよね。
“一見さんお断り”なんだから。
それなりの身分の方なんだ…。
とても落ち着いていて品のある話し方。
装いもフォーマルではないが、高級感が溢れている。
柔らかい表情を浮かべ、ケープの襟元をそっと抑える指先が
とても上品でうっとりと見惚れてしまった。