社長と秘密の生活
対応するスタッフは緊張している様子。
お料理を運ぶ手が震えているし、言葉もカミカミで。
まぁ、仕方ないよね。
このショッピングモールを手掛けてる
“一条”の会長夫妻を接客してるんだもの。
多分私だって、ホテル時代に同じように
大物相手に接客を任されたら、当然、緊張したと思うし。
『オープン初日にごめんなさいね』
私は心の中で呟いた。
「お食事が済んだら、帰られるとか…?」
「はい。申し訳ありませんが、夜に予約が入っておりまして…」
「それでは仕方ありませんね。せっかく飛行機で来られたのですから、お泊り頂こうかと思っておりましたのに」
「すみません。お気遣い恐れ入ります」
小夜さんと父親が話をしている。
実家の老舗寿司屋は、
水曜日の定休日と年末年始以外、殆ど休みがない。