社長と秘密の生活
私は辛うじて肩に羽織った
ファーのケープをギュッと握りしめた。
これさえあれば……何とか歩ける。
緊張と履きなれない高いヒールで足が震える始末。
玄関前にはいつも用意してあるベントレー。
にこやかに微笑む小夜さんとは裏腹に
私は緊張のあまり鬼の形相。
「杏花さん、そんなに緊張しなくても平気よ?ニコニコしてれば、すぐに終わるわ」
すぐ終わるって……。
そう言うことじゃなくて。
そもそもこのドレスで人前に出るのが問題なのに。
小夜さんに促され車に乗り込むと、車は軽やかに発進した。