人間
それから華織は「やることがあるから。」と先に帰っていった。
私は華織と別れると、なるべくゆっくりと家に向かった。
涙の後が親に気づかれないように。
遠回りをし、公園で休んで、目の充血が良くなったから、私は家に帰った。
「ただいま。」
私はリビングに向かった。
「おかえり。今日は遅かったのね。」
「うん。今日は友達と話しててさ。」
「そう。あんまり遅く帰ると危ないから、気をつけるのよ。」
私の嘘にも気づいていない母はそう言った。
私は「はーい。」と返事をして、自分の部屋へと向かった。
部屋に入ると、安心したのか、疲れたのか、私はすぐベッドへと倒れ込んだ。
「疲れた…。」
その呟きは、私しかいない部屋の中へと消えていった。