人間
上がって来たのは菜子だった。
私は何かしてくるだろうと思い、身構えたが、菜子は私を悲しげに見つめるだけだった。
「…何か用?」
沈黙の中、私が先に口を開いた。
すると彼女は、
「ごめん!」
と頭を下げた。
私はいきなりのことで目が点になっていた。
「本当はこんなにいじめるつもりじゃなかったんだ。」
そう、彼女は悲しそうに、話しはじめた。
「最初、誰とでも仲良くできるその性格がウザかった。それを近くにいた人達に愚痴ったら、そう思ってる奴らが他にもいて、少しだけ懲らしめよう。って話しになって…でも段々人数が増えてしまって、エスカレートしていって…あたし、もう止めよう。って言ったんだけど!…聞いて、くれなくて…謝ってすむ話しじゃないけど…本当ごめん…。」
そう言って彼女はまた頭を下げた。
彼女の様子を見ていても、言わされているとか、心の内ではそんなこと思っていない。
みたいなことでは無いみたいだった。
とても反省しているのは分かっていた。
それでも私は…
「…許しません。」
反省していると分かっていても、辛かった事は辛かったのだ。
それは変えられない事実だった。
でも…
「でも、言いに来てくれてありがとう。」
私は彼女にそう言った。