人間
「春?…電話何だけど…石倉さんって方から…。」
“なんで?”と思いつつ、私は鍵を開け、電話をもらった。
「…もしもし…」
「もしもし。…あの…菜子だけど…大丈夫?…じゃないよね…最近来てないから…。」
受話器の向こう側からは心配そうな声が聞こえた。
「…菜子ちゃん…人間って愚かだよね…」
私がそういうと、何が言いたいの?というふうに「どうしたの?」と言う声が返ってきた。
「私はさ、ずっと、友達だと思っていたの。ずっと…ずーと…ね…。でもそれは私だけの勘違いだったみたい。馬鹿でしょ?ホント馬鹿。そんなことに気づかない私も、そんなことをしている人達も馬鹿だよね…。」
彼女はそういう私の話しを黙って聞いていた。
「ごめんね。菜子ちゃん。明日は行くね。ありがとう。」
私はそういい、彼女の返事も待たずに、電話を切った。