グレーの秘密
タイトル未編集

誰から見ても、耀子は完璧だった。
P大法学部在学中でありながら司法書士試験に合格する傍ら、陸上部で次々大会に入賞する模範中の模範生であったし、またその経歴を知らずとも、誰しもがその容姿に振り返る美貌の持ち主であった。

地元の公立高校を卒業後、何をする訳でもなくふらふらしていた私が彼女と出会ったのは、楽そうだという理由のみで選んだ漫画喫茶のアルバイトだった。

働き出してから既に半年、仏頂面の店長の弛緩した顔を見たのは初めてのことだ。何事かと盗み見た履歴書には、ショートカットの似合う女の証明写真に、整った字でびっしり書かれた志望理由。

今思えば私は、その時はっきりと居心地の悪さを感じていたのだと思う。いつもは面白半分で読む履歴書をすぐにデスク横のボックスにしまい、業務に戻った。
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