グレーの秘密
よく容姿を褒められたし、試験や試合、コンクールの類は如実に私の優等性をあらわした。ただ、それらが正しいとは一度も思えなかったし、他人より優れていると考えたことも無かった。
何故か人に羨まれ、少なからず憎まれたこともある。その度に、あなたのほうが余程素晴らしいのに、と思わざるを得なかった。尤も、口に出すことは出来なかったが。

「耀子ちゃん?」
「ママ。」
「もお、帰ったらただいまくらい言ってくれれば良いのに」
「ごめんね、寝ちゃったかと思って。」
「一緒に食べようと思って待ってたんだから。やっと買えたのよ、バウムクーヘン。」
「まさか、オガワの!」
「くすくす。そうよ。用意しておくから、着替えてからいらっしゃい。」
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