グレーの秘密
「部活か。テニス、体育会でちゃんとやりたかったな。」
「テニスやってんだ。」
「サークルだけどね。肘壊しちゃったから、部活はやめといた。」
一瞬安東の顔が曇った、気がした。
「辛くない?」
「たまに痛むくらいだから」
「ううん、テニス、すること」
言った後、安東は少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。謝るのも悪いし、と、次の言葉を巡らせているようだった。
「一時はそう思ったよ。けど、好きだからやめられない、それだけだよ。」
困り顔の安東を助けようと自然に口をついて出た言葉だった。一時と言ったが、正直通院から帰る度、テニス部の活動を目にする度憂鬱だった。しかしその言葉は本心であり、事実なのだと、自分でもはっとしたことを覚えている。
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