グレーの秘密
次の日、耀子は私服で出勤してきた。

デニムのショートパンツに、衿ぐりの深いTシャツ、ウェッジソールのサンダル。
シンプルでもそのそれぞれと胸元の小さなネックレス、肩に提げた鞄、どれもがハイブランドであることに私は気付いていた。それはさり気なかったし、飼い馴らされたように彼女自身にぴったりと収まっていた。

「マリエちゃん見て、安東さんモデルみたいだよ。」
「目がキモいよ橋本。本人に言えば」
「マリエおはよ。ああ、橋本くんだっけ?宜しくね。」
最初おどおどしていた橋本だったが、5分も話すうちに打ち解けたようだった。
私は新刊チェックをしながら出勤時の耀子を思い出し、ガリ勉はきっと嘘なんだろうなあ、等思いを巡らせていた。私はそういうことに敏感だ。大学デビューというものか否か位、容易に判断出来る。

「マリエ、手伝うよ」

膨大な漫画雑誌のうちの約半分をひょいと持ち上げ、耀子は颯爽と受付カウンターを後にした。
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