君とあたしの距離、50㍍。
ふと通路をまたいで隣の男子が、
そう呟く。
その男子はやけに厚着で、
グレーの薄手のコートの中に、
さらに冬物のノルディック柄みたいな
はおりもの…、パーカーのようなもの
を着ていた。
あたしはその一言を、
頭の中でリピートさせる。
"半袖でもよかったかもな"
全くそうだと思う。
「それ、あたしも思った」
あたしはその男子の方を向いて、
そう言ってみる。
男子は薄手のコートを脱ぎながら、
「やっぱり?俺厚着しすぎたわ」
と苦笑いをした。
その男子の名前は、中村悠介。
3,4年のときに、同じクラスに
なったことがある。
=同じクラスになるのは、3度目。