君とあたしの距離、50㍍。
今だって話し掛けるのは、
かなり勇気のいることだった。
何でか。
それは、あいつのことが好きだから。
理由なんて、特にはなかった。
だけど、初めて言われたあの一言が、
ものすごく嬉しかったことは覚えてる。
「絵、意外と上手いんだな」
小4の頃、理科のノートに描いていた、
落書きを褒められたとき。
女子には散々、たぶん"お世辞"で
よく言われてた。"絵、上手いね"って。
だから、男子にそう言われるのは、
すっごく新鮮で。
嬉しかった。
それでかな。
よく分からないけど、あたしはあいつが、
――中村悠介のことが、"恋愛感情として"、
好きなんだ。