present for you
 そこそこ整った顔をしていて年は二十代前半くらい、仕事の休憩中か、帰りなのか、スーツにカチッとした黒っぽい鞄を持っている。

「では、今日はこんなフラワーアレンジメントをしていきます」
 男の人がここに来たのは初めてで、若干緊張しながら体験はスタートしていった。

「こんな感じで良いですか?」
 デザインに凝る女性とは違って、入れ物の牛乳パックの飾り付けも早い。
「早いですね。直感でシール貼ってった感じがします」
「はは、考えたってキレイに出来ないですし」
 よく考えたらちょっと失礼な事を言った気がするが、穏やかに笑ってくれた。
「やっぱりここは女の子が多いですか?」
「そうですね。小さな男の子がお母さんと来るってのはあるけど」
「もしかして、男一人で体験って自分が初めてですか?」
「はい、最初びっくりしました。どっか探してると思ってたから」
 その男性との会話はさほど盛り上がりも下がりもせず、終始のんびりとした空気が流れていた。
私にはその空気がとても心地よかった。
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