不思議な出会い
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位置について
よーい パンッ
ピストルの音が響き渡る
みんなの応援の声が聞こえる
私は自分に言い聞かせる
「大丈夫。いける」
女子のハンデもあってか、今のところバスケ部は2位。サッカー部は3位。
ラストスパートの直哉先輩との勝負にはもってこいな差だ。
「……っ…」
(どんどん頭が痛くなってきてる…)
「…………」
(直哉先輩さっきから静かだな…)
そんなことを考えてるとちょうど健吾先輩の姿が見え始めた。先輩は後ろのサッカー部とは充分な距離を離してくれている。
「おっしゃ、亜実任せた!」
「任せてくださっ……」
健吾先輩の声に負けないようにと大きな声を出そうとしたのが間違いだったらしい。
バトンを受け取る前に頭の中でプチっと音がした気がする。
「……っ……」
(やばい。痛みが…
踏ん張れ、自分!!)
とりあえずバトンを受け取って走り出したけど、頭痛は増すばかり。このまま後200メートルも走らなきゃいけないと思うと更に痛みが増してくる。
「くっ…」
(…あれ?翼?
なんかジェスチャーしてる?
なんだろ?っ……
正直あんま考えられないや…)
翼のジェスチャーの意味も分からず無我夢中に走っていると、後ろから直哉先輩がすごい勢いで追いつこうとしてる音が聞こえる。
「あぁ〜これは抜かれる…」
(っ……
栞の言う事聞いておけばよかった)
そう思って直哉先輩に抜かされるのを覚悟したその瞬間、後ろから腕を掴まれ、そのまま抱きかかえられた。
「……え?………」
(一体何が……)
直哉先輩の声が聞こえて、返事をしようとしたその瞬間私の意識は途絶えた。
みんなの心配する声と、湧き上がる歓声。
「亜実ちゃん、無理は禁物だよ」
そして
直哉先輩の心地よい声が聞こえた気がする