死神の邂逅
「一々、癪に触る男だな。いったい全体、何なんだ、お前。なんで死なない」
五十鈴が人になってまで聞きたいことがこれだった。
男――藤馬の軽口ぶりについつい忘れてしまいそうになるが、現段階、藤馬は死に損ないだ。
相変わらず血は流れ出て、陰惨で悲惨な状況は停滞したまま、藤馬の痛覚をフルに働かせているだろうに。
にやにやとした口、ぎししっと軋む鮫の歯が怪我自体を無視しているように見えた。
普通なら死んでいる。即死だ、なのに藤馬のありさまはこれ。
日が昇るぐらいには、と藤馬は自身の余命を予知するが、あまりにも多く見積もりすぎだ。
もう、死んでもいいのに。
死に損ない、なのだから。