死神の邂逅


朝日が昇るまで――要は、朝になるまでこの男は死なないのか。


五十鈴の体内時計は午後十時あたりをさしている。今は夏だから、朝日が昇るのは午前五時すぎあたりか。


その間、七時間。


その間に何があっても男は死なず、痛みを宿したまま死に損なってしまうのか。


確かにぞっとする呪いだ。もしかしたら、五十鈴が来るだいぶ前から男はこのままでいたのかもしれない。


痛んでいないと思ったが、単にそれは、痛みにある程度の“耐性”ができただけの話。


途方ない痛みの連鎖に気狂いしていないのは藤馬の精神が強靭であることを物語るが、どのみち死ぬのは確定事項。


解けない呪いに藤馬は己の死を見たわけだが。


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