死神の邂逅


「何ができるというんだ、この私に」


五十鈴はどこまでも甘かった。


偽善であり、エゴであり、自分勝手でしかない人救いだが、分かっていても助けたいと思うのが五十鈴であった。


本当ならば――藤馬が五十鈴に気づかなければ無視を決め込むつもりだったが、こうして話、何かしらのできることがあると言われれば、助ける手を伸ばしてしまう。


優しいだけ。
たったそれだけのことで。


「シシッ、死神辞めちまえよ、五十鈴ちゃん」


初対面の奴ですら、その性格では合わないと言われてしまった。


大きなお世話だと五十鈴は鼻を鳴らして、藤馬と向き合う。


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