死神の邂逅


困ったーと声を張り上げた男に五十鈴はドキリとしたが、“分かるはずがない”とすぐに冷静になった。


五十鈴の左目じゃあるまいし、こんな暗がりの中、外灯も何もない山林の、遠く杉に羽休めしていよう“フクロウ”を人間が見つけるわけもない。


第一、男の目には包帯。近場でも見えないと思えようにも。


「こんな困って――んや、死にそうな奴いんのに高みの見物たぁ、どんな冷徹野郎だよ。助けろ。死んだあとに呪うぞ、クソ鳥」


「……」


先ほどのことは助けてもらうための前ふりだったか、男は今度こそ助けを求めた。


どう見積もっても助けを乞う態度ではなく、上から目線な生意気な口調なのだが――五十鈴は嘆息したあとに羽を広げた。


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