その猫、取り扱い注意
ふわりと揺れる黒髪。まるでその姿は黒猫のようだ。
次第に遠くなる距離。
あたしは知っている。イツキくんは絶対に先に行かない。
なんだかんだ言いながら待っていてくれる。
でも一緒に歩かないとやっぱり寂しいから、
あたしは大きく息を吸って叫んだ。
「イツキくん!そんなんじゃ、チアキくんと一緒に行っちゃうよ!」
「死ね」
不機嫌に眉を寄せてあたしのところまで走って来た。
なんだか飼い主から餌を取り上げられる猫のようだ。思い通りに動いてくれる彼が可笑しい。
「笑ってんな。ブス。きもい」
「ひどい」
「チアキと一緒に行くって言ったら窒息死させてやる」