その猫、取り扱い注意
「……」
「風邪ひいてるの?イツキくん」
「別に」
「そんな冷たいこと言わないで…。心配したんだから」
確かに彼の声は掠れていた。風邪ひいてたんだ。それなら彼女であるユミちゃんに教えてあげればよかったのに。
「心配して欲しいなんて頼んでない」
「へ」
まさかそんなそっけない答えが返ってくるとは思わなかったのか、ユミちゃんから間抜けな声が出た。
「相合い傘してる奴に心配されたくない」
「それは……!」
「言い訳なんていらねーし」
血が出そうなくらい唇を噛み締めた。
僕のせいだ。
彼氏のいるユミちゃんと一緒に帰ったから。だからイツキくんが怒ってるんだろう。
見てられなかった。
今にも泣きそうなユミちゃんを置いて行くイツキくん。