その猫、取り扱い注意
僕はユミちゃんが好き。
でもユミちゃんはイツキくんが好きで、イツキくんもユミちゃんが好き。
自分の気持ちに嘘はつきたくない。
「あっれー?イツキじゃーん」
「行くぞ」
「ありがと!あたしの為に迎えに来てくれたんだよね」
この声は……。
「なんでナナちゃんが…?」
置き去りにされた彼女がぽつりと呟く。雨は容赦なく降り続けた。
「なーんだ。聞いてないなら教えてあげるね!」
「なに…を?」
「あたし、イツキの彼女になったんだ!」
この場に似合わない楽しそうな声が耳にまとわり付いて離れない。
イツキくんはユミちゃんを見ることなく、腕に絡み付くナナさんを振り払うことなく、先に行ってしまった。
取 り 残 さ れ た 傍 観 者
( 傘を捨てて、彼女の元へ )