その猫、取り扱い注意

きっと君は気づいてる





あたしの彼氏はずるいです。


今更何もなかったかのように接してもらっても切なくなるだけだ。


苦しい。喉の奥がきゅっとして息がしにくい。泣きすぎて目が痛い。


人間ってこんなに涙が出るんだと感心させられるくらいに流れた。


こんな道路のど真ん中で何やってるんだろう。通り過ぎる人々の視線を浴びながら、声が枯れるまで泣いた。



「ユミちゃん」


「……」



雨に濡れて色っぽいチアキくんが無表情のままあたしを見る。


あたしの知ってるチアキくんじゃない。


彼はいつもにこにこと笑っていて、それを皆が取り囲んでいる。そんな感じ。


今の彼はあたしの思ってる幼馴染みじゃなくて、男の子の顔をしていた。




< 31 / 105 >

この作品をシェア

pagetop