その猫、取り扱い注意
もう一つ。俺はチアキがユミに告白しない理由を知ってしまった。
長年の幼馴染みだからといって好きな女に手を出さないところが嫌いだった。
弱虫。意気地無し。そんなに欲しいなら奪ってみろよ。
いつもチアキの周りには女の集団で溢れていた。
もしみんなに人気者のチアキに特別が出来たらみんなは喜ぶのか。
喜ぶ奴もいるだろうし嫌だと言う奴もいる。
女子は圧倒的に後者が多いだろう。
そんなの俺でも分かる。だから駄目なんだ。伝えたらユミに被害が加わる。
脅されてやっとチアキの気持ちが分かった。
「イツキ」
「……」
「ねぇ」
「何」
名前を呼ばれて顔を上げる。此処はナナの家。部屋には俺とナナ二人だけしかいない。
「今日チアキ学校休んだね。なんでだろう?」
「興味ない」
「風邪かな。昨日雨凄かったもんね」
「……」