その猫、取り扱い注意
あたしの声にイツキくんはくるりと後ろを振り返って「冗談」と意地悪く笑って席に着いた。
冗談に見えないよ…。
「そろそろ本題に入りましょうか」
「帰りたい」
「まだ一問も解いてないのにーっ」
「さぁ、問題解こう」
とんとんとシャーペンで示した問題。嫌いな数学だけどこうしてイツキくんが教えてくれるなら悪くないかな、なんて。
「それ、違う」
「……うそ」
「これも」
「……え」
「これも」
「も、もしかして、全部間違ってる?」
「そ。全部やり直して」
思い描いてたシチュエーションじゃない。
携帯小説の定番ならウフフアハハな展開になる予定なのに!
目の前の彼氏はあたしの解いた問題の途中の式を見て、何やら赤字で書き込んでる様子。
真面目だ、
と思ったのが間違えで。