その猫、取り扱い注意
傷ついているのは、あたしだけじゃない。
ユミちゃんを追いかけて来たのはイツキだけじゃなかった。
「彼氏なのに情けないです」
「本当だよ。彼氏なんだからしっかりしてよ」
木の影で隠れていたらしい彼は頼りなさげに苦笑いをした。
駄目じゃんチアキ。
彼氏のくせに元カレより遅く登場だなんて駄目すぎるよ。
ヘタレな彼を責めるような口調になってしまう。
でもあたしがこうでも言わなきゃチアキは動いてくれないから。
「僕が彼氏でいいのかなって思います」
「そんなんだからイツキにとられるんでしょ」
「好きな気持ちは負けてないと思います」
「問題はそこじゃないんだけどな」
似た者同士だと思った。
まるで鏡を見てるような気分。そうか。あたしとチアキって立場が一緒なんだ。
辛くて、苦しくて、それでも好きで。