その猫、取り扱い注意




別れたくない。


いいの。こんな強制的な付き合いでも。


好きな人が隣で歩いてくれるだけでいい。


それくらい好きだから。


二人で学校に行って、それぞれ自分のクラスへ入る。


イツキが教室に入る時にいつかチアキがユミちゃんにしたようにキスをしてみた。


唇を離すとばつが悪そうな顔のイツキ。その顔を見れただけで満足。


さっさと自分のクラスに戻る。


あたしのクラスはわりと騒がしいクラスだけど今日はいつもよりいっそう盛り上がっているようだ。


それもそのはず。なんせあたしが仕向けたんだから。こうなるように。



「ナナ、おっはよ!聞いた?隣のクラスにユミって子いるじゃん!」


「知ってるよ。"二股"してたんでしょ?」


「流石情報網の広いナナ!」



チアキのファンクラブの友達に流した画像。



『イツキと付き合ってた頃からチアキをたぶらかしてた最低女』



メール作成の際、件名にそう書いた。


ユミちゃんはたぶらかしてなんかいない。


あたしは嘘の噂を流した。あたしが最低女。


イツキが悪いんだよ?


あたしを好きにならないイツキが悪いんだ。


今頃ユミちゃんがファンクラブの女達に責め立てられている姿が目に浮かぶ。


さて、助けるのはどっちかな?



ほ の か に 痛 む 心

( それはきっと気のせい )




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