その猫、取り扱い注意
「変な冗談はやーめーてー。話したいことがあって、お前の元カノのユミちゃんが二股って噂が流れてんのね」
は…?
言ってる意味が分からなくて思わずヒナタの胸倉を掴む。
「どういうこと」
自分でもよくこんな低い声が出るな、と思った。
周りのクラスメートが喧嘩と勘違いして、俺とヒナタを引き離す。
なんなんだよ。
まじで言ってんのかよ。
「おいー。親友に何すんだよー。あくまで噂だから」
「噂ってなんだよ」
最近、ユミのことばかり悩まされてるからつい喧嘩腰になってしまう。
俺、きもい。別れた女の噂くらい無視すればいいのに。
何、詮索してんだ。女々しい。
ヒナタから噂の内容を説明してもらって、頭の中でナナの顔をちらついた。
まさか、あの女が…?
『自分がしようとしたことに後悔してよ』
気付いた時には、身体が動いていた。
と に か く 、 走 れ
( どうかあいつが無事であってほしい )