その猫、取り扱い注意
イツキくんは僕を通さないように僕の前に立つ。
「チアキ、頼む」
「ユミちゃんを振った男に行かせる訳ないよ」
「一生のお願い」
「……何?」
「行かせて」
まるで金縛りでもあったかのように僕は背中を向ける彼を見つめた。
何故頷いてしまったのか自分でも分からない。
ユミちゃんに幸せになって欲しい。
ただ思うのはそれだけで。
我ながら馬鹿なことをしたと思う。ライバルに譲るなんで彼氏失格だよ。
残された僕は今日は何かが変わるような、そんな気がして堪らなかった。
きっと、いい方向に変わる。
どこからそんな自信が湧いてくるのか分からないが、そんな気がした。
虚 し く 響 く 足 音
( 足が勝手に教室へ )