その猫、取り扱い注意
君には完敗だよ
あたしの彼氏はヒーローだ。
「あーあ…」
屋上から"それ"を眺めてフェンスにもたれかかる。
自分がこう仕向けたことなのに何故だかため息が出た。
下でチアキのファン達に囲まれたユミちゃんは逃げ場を奪われ、壁にぴったり背中がついている。
逃げ場なんてないよ。
あたしが苦しい分まで、痛めつけばいい。
うんと傷ついてチアキからも離れてくれればいい。
そしたら、誰も守ってくれないじゃん。
ユミちゃん…。
あたしみたいにひとりぼっちになってよ。
どうして彼女ばかりがちやほやされてるのか分からない。
イツキもチアキも馬鹿みたいに真剣に奪い合っちゃって本当どこがいいのかな?
二度目のため息を吐いて、下の様子を伺う。
ファンの人も文句言うだけじゃなくてさ、手を出したりしなきゃ、ちっとも面白くない。
やっぱり、あたしが下行ったほうがいいのかも。
しばらくは見てるけど何も起こらなかったら行こう。
「いたーい」
立って見てたら足が痛くなってきたからずるずると地面に座り込む。
「……ははっ。結局あたしは何がしたいのかなぁ」